うずまき

 片付けコンサルタントの近藤麻里恵さんが、3人育児をはじめてから、きれいに部屋を片付ける事は今は不可能だといったん諦めた、と言っているのが世界中で話題になっています。私も片付けのコツがあるなら教えてほしいと思って本を読んだ事がありますが、実のところ、一番聞きたかった言葉はこれだったのかも?っていうくらいスッと腑に落ちました。プロがちゃんと無理なものは無理って言ってくれて、心が救われたのは私だけじゃなくて世界中にいるからニュースになっている訳で、そう思うとやっぱりすごい人です。


 はあちゅうとしみけんが産後のいざこざで事実婚を解消したというニュースを目にした時も、賢くて人の心の機微にも敏感なインフルエンサーの女性(はあちゅう)と、女性よりも女性の心身に詳しそうな男性(しみけん)をもってして、事実婚という形で新鮮で良好な関係性の維持を目指してもなお、くぐり抜けるのが困難な時期ってあるんだなと思いました。


 なんかしんどいな、苦しいな、辛いな、と感じる時って、たいてい、まわりには器用に要領よく立ち回っている人もいるのに、自分ばかりが上手くこなせない程たくさんの仕事を抱えて損をしているようにも感じています。何のトキメキもない面倒な汚れ仕事も、いつかどこかで誰かが引き受けなくては生活はスムーズに回らないというのに、要領の良い人達が回避した分の面倒な汚れ仕事までどんどんどんどん上乗せされて、しかも、はじめからそれはそういう決まりになってるから当たり前みたいな空気まで漂ってきて、肉体的にも精神的にも追い詰められて、押しつぶされそうになる時、あります。まわりの余裕がありそうな人たちは、切羽詰まってアップアップしている自分が見えているはずなのに、どうして早く気づいて協力してくれないんだろう?と理不尽にも思えてきます。

 

 一日、一週間、一か月、一年、そして人生を通じた生活のサイクルにはそれぞれ、スムーズに流れやすいゆったりした時期と、くぐり抜けるのに努力を要する張りつめた時期があって、人生には困難がつきものだという事を仏教では四苦八苦といいます。

 

 四苦とは生老病死、八苦はその四つに加えて、愛別離苦(あいべつりく…親しい人との別れ)、怨憎会苦(おんぞうえく…恨みのある人との出会い)、求不得苦(ぐふとっく…欲しいものを得られない事)、そして五蘊盛苦 (ごうんじょうく…自分の体も心も思い通りにならない事)です。

 

 そうなんです。毎日向き合っている自分の体と心が、人生が、思い通りにならないのは自分だけじゃなくて、大昔から、みんなそうなんです。

 

 大前提として、自分の人生は自分の思い通りになんてならないものだけど、そうは言ってもやっぱり、ストレスに押しつぶされそうな心身の状況を打開する糸口はいつだって自分の内側にあって、自分の心と身体を固めすぎず緩めすぎす、自分の能力を過信せず甘え過ぎず、その場その場で、自分の心身のネジを締め直したりちょっと緩めたりする地道な意図的作業によって、今よりちょっとだけ、でも確実に、快適な状況を引き出す事ができます。


 言葉を変えると、むしろ心も体も人生も思い通りにならないからこそ、必要にかられて行わざるを得ないその内なる試行錯誤の中で得られる感覚の事を生きている実感といい、それは繰り返す程に渦巻きのように勢いよく立ちあらわれてくるのだとも言えます。

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