重心をどこに置くか

平らな床の上ではなく、凹凸な地面の上で裸足でヨガをしていると、バランスを崩さないために重心をどこに置くのかというテーマに対して、より意識的になります。

基本の立ち姿勢であるタダーサナ(山のポーズ)を例にとると、重心は下腹の丹田(へそ下4〜5cmの奥の方、仙骨の少し前)にあります。丹田から地面に向かって股関節で2つに分かれた流れは、すねの内側の太い方の骨である脛骨(けいこつ)の真下にある距骨(きょこつ)の上に乗り、足裏に流れて地面とつながります。足裏の方から言うと、足裏の真ん中より少しかかと寄りの内寄りに重心を乗せていきたい、という感じです。

足裏からもう少し丁寧に見ていくと、主に地面を押しているのは親指の付け根と小指の付け根、かかとの骨の3点で、重心が乗る距骨の真下は、かかとの骨もあるけど土踏まずの後ろのあたりになるので地面からは浮いているのが本来の位置。

もう一度、丹田の方からの流れで確認すると、丹田から股関節で2つに流れが分かれて、距骨から更にそれぞれ親指の付け根、小指の付け根、かかとの3点に流れて地面とつながります。

この距骨という骨は身体の中でも珍しい、筋肉がついていない骨で、靭帯だけでまわりの骨と繋がっている骨なので、かかとの骨の位置関係、かかとの骨が地面に対してどう置かれているかということに、とても影響されます。というか、上からの流れで、すねの骨がどの位置にあるかというのと、下からの流れでかかとの骨がどの位置にあるか、この上下との関係性で全てが決まると言っていいほどで、筋肉を使って距骨を直接的に動かすことは構造的にできません。

かかとの脂肪層がぶ厚い事もあって、かかとの骨は内外前後にとても傾きやすい構造をしています。下半身の安定感が必要なポーズをとる時は必ず足裏のアーチを意識的に引き上げて、かかとの骨の位置が崩れないように整え、親指の付け根、小指の付け根、かかとの三点でしっかりと足裏を地面に根付かせて、足場を固めます。


…と、教科書的、理想的にはそういう事になるのですが、実際には、地面が凸凹だったり、動くたびに重心点が移動したり、利き足があったりするし、筋肉のコンディションがアンバランスになっていたり、関節に痛みや違和感があったりする時もあります。その時々の状況に合わせて、丹田から地面に対して垂直におろしたポイントが、地面に接している身体の外側を囲んだ面である支持基底面(タダーサナであれば、両足で囲まれた面)の中に収まるように、ざっくり気をつけていれば大丈夫なので必要以上にこわがらず、自由で快適な気分を味わえる範囲で楽しく動き続けていられる事が何より大切だったりもします。その自由で快適な気分はまるで、地球という安定した土台の上で踊る軽業師のように、重力と適切な関係性を保ちバランスが取れている、という実感です。

タダーサナ(山のポーズ)を基本として、それでは片足立ちの時は重心をどういう流れで地面につなげれば安定するのか?逆さまになった時はどうか?私たちはポーズを通じて自由と安定の落としどころを学びます。

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