脳細胞は年を取っても減らない
ヨガというのは、日々の生活の中で知らず知らずの内に溜め込まれたストレスやモヤモヤを取り払い、スッキリした状態を取り戻せるものでもあります。
それでその「モヤモヤ」の中には、人間関係の問題から生まれる感情だけではなくて、誤った認識や無知によって自分の内から生まれる思考や感情、感覚もあります。
広く知られている誤解に「年を取れば取るほど神経細胞が減っていく」というものがあります。脳の研究者、薬学博士である池谷裕ニさんによると、これは都市伝説で、実際には、年を経てもはっきりとした脳細胞の減少は認められないそうです。間違った情報でマイナス方向に自己暗示をかけてしまうことは健全ではない、とも。
たしかに神経細胞の数は新生児が多く、生まれ持った神経細胞の約70%は、3歳の頃までに間引きされます。しかし、それ以降は神経細胞数はほぼ一定で、解剖組織学的にみれば脳は衰えてゆかず、それどころか、記憶の中枢、海馬の神経細胞は逆になんと増えるんだそうです。
介護施設のご利用者さんの中には、認知症の症状をお持ちの方も多いです。もしも、自分の中に「年を取れば取るほど神経細胞が減っていく」という誤解があったなら、自分にもいつか必ず同じような症状が現れてくるのだという、新たな誤解を生むおそれがあります。
実際には、認知症は、手足や、内臓や、目や耳などに、様々な病気があるように、脳という器官に現れた病気の症状なのであって、誰しもに可能性はあるものの、年をとったら必ず皆が認知症になる、というものでもありません。
誤解や、自分を害する恐れのあるような癖は、気づいたらすぐに取り払った方がいい。雨の日に散歩から帰った犬が、ブルブルっと身を震わせて水を振り払うみたいにして。
ちなみに、池谷先生によると、身体感覚(入力)と身体運動(出力)の二点こそが脳にとって外部接点のすべてで、入力と出力はともに重要ですが、あえてどちらが重要かと問われれば、躊躇なく「出力」と答えるそうです。感覚より、なお一層運動が重要。なぜなら、脳は出力する事で記憶するようにできているから。
また、ある研究によると、同じ感覚刺激が脳に伝わっていても、そこに身体運動が伴うと脳神経のニューロンが10倍ほど強く活動する事が読み取れるそうです。身体を動かしているかいないかによって、脳の反応は全く違うものになる。
「精神と身体は切り離して考えることはできません。心は脳にあるのではありません。心は身体や環境に散在するのです」
という脳研究者としての池谷先生が導き出した結論に、日々のヨガの練習で味わっている実感の答え合わせをしてもらったような、心強さを感じています。
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