人生激ムズくない?
ヨガ哲学好きのみなさん。この本はもうお読みになりましたでしょうか?
「自分とか、ないから。教養としての東洋哲学」
著者のしんめいPさんは、大阪府出身の30代男性。東大法学部卒業後、大手IT企業に勤めるも合わずに退職。鹿児島県の島に移住して教育事業に携わるも合わずに退職。一発逆転をねらって芸人としてR-1グランプリ優勝を目指すも一回戦で敗退し、引退。現在無職というかなりぶっ飛んだ経歴の方です。
書き上げるのに3年半を要したというこの本も、かなりぶっ飛んだ内容です。冒頭で、「東洋哲学は劇薬である。効果はすごい。でも取り扱いをまちがえば、めちゃくちゃ危険」とあります。そうだとすると、この本はうっかり笑いダケ(きのこ)でも食べてしまったかというくらい、読みはじめすぐから笑いが止まらなくなるという症状が出る人には出ます。
「教養としての東洋哲学」を読んでいるはずなのになぜ。
しんめいPさんは執筆期間に関連書籍も含めると1000冊は本を読んだそうです。東洋哲学の効果も危険も自分自身の実感を通じて知り尽くした上で、できるだけわかりやすく、かつ、できるだけ危なくないように、ものすごい誠実さと正直さでもって現代を生きる私たちに向けてまとめられた一冊です。生きづらさが(少し)マシになる(かもしれない)と願って。
何回読んでも笑える本ですが、この本が出来上がるまでのしんめいPさんの心境、真摯に自分と向き合う姿勢のストイックさを思うと、笑い泣きしたくなる。不思議な一冊です。間違いなく今までにはなかった新感覚東洋哲学本。
しんどい時、人は自然と、笑ったり泣いたり心が動くような何かをしたくなります。いちど感情を大きく揺らしてエネルギーを発散することで、落ち着きを取り戻せることを本能的にわかっているかのように。
笑いではなく、泣くことをきっかけに心が落ち着きを取り戻すこともありますね。涙活。歌でいうなら中島美嘉さんのような切なくて美しい歌を聴いた時のような感情の揺れ。呼吸でいうなら、吐くが笑うで、吸うが泣く。
「自分とかないから」が、笑う/息を吐く方向から心に揺さぶりをかけてくれる一冊だとしたら、泣く/息を吸う方から揺さぶりをかけてくれる一冊はこれ。
「回復する人間」
著者のハン・ガンさんは今年、アジア人女性ではじめてノーベル文学賞を受賞した50代の韓国人作家です。
「文芸評論家シン・ヒョンチョルの言葉を借りれば『この本の関心事は、ほかの読み方をすることが困難なほどはっきりしている。それは〈傷と回復〉だ』ということになる」
(「訳者あとがき」より)
訳者によると著者は20代前半でデビューして以来、その真摯な作風と、強靭さと繊細さを併せ持つ文体で、韓国内で高い評価を得てきたそうです。
この短編集は、どのストーリーも読んでいて胸が痛くなるほど、シリアスな状況に置かれた女性たちが登場します。
世界幸福度ランキングというどのくらい信憑性があるのかはよくわからないデータによると2024年、51位の日本と肩を並べる52位の韓国で、奮闘する女性たちが、悩み、もがき、そして回復する過程が描かれています。
誰しもが、関係性の中で傷を負い、また、関係性の中で回復していく事の神聖さを目にして言葉をうしない、癒されます。
0コメント