「奇跡の脳」


 ジル・ボルト・テイラー博士は、脳卒中から奇跡の回復を遂げた事で知られる脳科学者です。解剖学者の養老孟司先生が、著書の中で度々そのエピソードに触れているので名前は知っていました。最近、彼女自ら脳卒中体験を語る講演をYouTubeでたまたま見て感銘を受け、もっとよく話を聞きたいと思い、著作「奇跡の脳」を読みました。


 ハーバード大学で脳神経科学の専門家として活躍していた彼女は37歳の時に脳卒中に襲われるも、8年に及ぶリハビリを経て復活を遂げました。患者としての実体験を通じて新たに得た気づきを、脳科学者としての観点から解き明かしたこの本は、これ以上ない程の説得力を備えた、まさに"奇跡"の一冊です。


 「奇跡の脳」は2009年に発行され、2022年には彼女の二冊目の著書となる「WHOLE BRAIN〜心が軽くなる「脳」の動かし方〜」が出版されています。

 

 訳者あとがきによると、前著はあくまでもテイラーの体験をつづったものですが、本書は、読者にテイラー流の脳の使い方を実践してもらうのが狙いなのだそうです。

 

 この本も、これ又ほんとにすごくて、ここに書かれている内容は、ヨガの古典が指し示すサマーディへの道そのものであり、かつ、全くもって新しい現代的な切り口で明晰に説かれていて、ヨガをする者にとっては、ある種、衝撃的でもあります。


 約2000年前に確立したと言われるヨガの概念と、現代の科学者が最新の研究と自らの体験から導きだした結論が、同じ道を示している事に、ただただ驚きます。


 ヨガの教科書中の教科書とも言える古典「ヨーガスートラ」に出てくるヨガの八支則(八部門)の内のひとつ、プラティヤーハーラ(感覚・感情の制御)の練習方法について、現代に生きる私達が取り組みやすい具体的手法が提示されています。

 

 ヨガの八支則とは…


1.ヤマ(生活上の禁戒)

2.ニヤマ(生活上の勧戒)

3.アーサナ(ポーズ)

4.プラーナヤーマ(呼吸法)

5.プラティヤーハーラ(感覚・感情の制御)

6.ダーラナー(集中)

7.ディヤーナ(瞑想)

8.サマーディ(一体感)


 1〜4 をハタヨガといい、行動面を整える領域です。そして、5〜8はラージャヨガといって、意識の面にフォーカスを向ける領域。ハタヨガの練習を続けると、意識の変化という果実(恩恵)が実ると言われます。


 ヨガと聞いて、普通イメージされるアーサナ(ポーズ)の練習は、八支則の内の一部に過ぎないのであって、それ以外の全ての時間も含めてどのように生きるかを学び実践するのがヨガの本質です。全ての人、全ての本、全ての状況からヨガを学ぶことが可能だということです。


 本を読むのが大好きな私にとっては、どのテーマについて書かれた本でも、"自分にも関わりのある事だ"という当事者意識を持って、より興味深く読めるようになったということ自体がすでに、ヨガから得た大きな恩恵のひとつです。




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