クロスチェック


 YouTubeで物理学者の野村泰紀さんが宇宙について、とても興味深い話をされていました。

 

 私達の宇宙は今138億歳で、今なお膨張を続けているフェーズにあるそうです。

 起源に遡るほど、宇宙全体は今とは違ってポタージュスープのように均質的な姿をしていたことが明らかになっています。熱々で密度濃厚なポタージュ。スープは熱を冷ましながら、わずかな揺らぎによってエネルギーの偏りを増幅させつつ、膨張し続ける内に、今の銀河のような姿になりました。エネルギーには、多いところに更に集まり、少ないところからは更に減っていくという性質があります。


 物理学者は、宇宙という時間的にも空間的にもとんでもなく大きなスケールのテーマをその優秀な頭脳に取り込むかのようにして、データを用いて数学的に、理論的に、左脳的に、謎を明らかにしていきます。


 野村さんの話を聞いておもしろいなと思ったのは、数学と違って物理は、理論的に矛盾せず常に再現される法則であると証明されても、そこから、現実に今起きている現象を観測して、理論と現実のすり合わせを必要とする、というところです。数学的、理論的、左脳的に取り込んだデータと、芸術的、感覚的、右脳的に取り込んだデータとのクロスチェックを必要とするとも言えます。


 今の時点で少なくとも、100億年前の宇宙の姿までは観測されクロスチェックが済んでいて、研究者達はそこから更に起源に遡るフェーズにあるそうです。


 それほどまでに大きなテーマが解き明かされつつある時代でありながら、一方で、今この現実において次の瞬間、個別具体的に何が起きるかは、やっぱりわからないそうです。例えば、グラスを高いところから硬い床の上に落とす時、高確率で割れるという事はわかっているけど、ガラスの破片が具体的にどんな形になるかまでは、毎回違うのでわからない、というような事です。人の一生には生老病死という大きな流れがあるのはわかっているけど、個別具体的に何が起きるかは、実際にその人生が誰かによって生きられるまでは明らかにならないし、宇宙の起源が徐々に明らかになってきたとて、やはり同じような流れを経て形成された銀河における星の配置は、そのつど変化します。


 実は人の身体は小宇宙と言われる程あらゆる要素が内包されているので、宇宙という広大なテーマを扱う物理学者みたいに、ヨガという自分自身を理解しようという作業においても、あらゆる意味で綿密なクロスチェックが求められます。何千年の昔から蓄積されたヨガのデータや理論を用いて、実際に、自分自身の身体で観測したデータとすり合わせながら、自分が生きているという現象に対する理解を深めていきます。



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