逆転のポーズとヤマトタケル


 シルシアーサナ(頭立ちのポーズ)は、完全な逆転のポーズです。上半身、特に肩関節まわりの筋肉と体幹を強化して、体を中心で安定させる感覚を養います。

 シルシアーサナに入る時は、両手の指を組んで前腕をマットに置き、手の平と後頭部で押し合いながら、腕でしっかりと床を押します。

 

 膝を伸ばして、両足を前に前に歩かせていきます。もうこれ以上前には進めないという所までたどり着く頃、重心はしっかりと腕の上に移動しています。体幹を程良く引き締めて逆さの状態でも軸を安定させておく準備が整うにつれて、自然と足は浮き上がり、重力と反対の方向へ伸びていきます。

 

 この、ひたすらに前進してある地点にたどり着いた後、時が満ちたら自然と足が浮いて上昇していく時の感覚が、すごく羽曳野的だなーといつも思います。

 


 似たような意味において、リバースウォーリア(逆転の戦士のポーズ・戦いをやめた戦士のポーズ・平和な戦士のポーズ)も羽曳野的だと勝手に感じています。戦士のポーズのバリエーションのひとつで、後ろ脚にもバランスよく重心を乗せている感覚をつかみながら、縮こまりやすい脇腹をしっかりと伸ばすことができます。戦士のポーズを行うと前向きな積極心が養われますが、合わせてこのポーズを行うことで冷静さを取り戻せます。

 また訳のわからない事を言い出したぞと思わずに聞いてほしいのですが、これらのポーズを羽曳野的だと思う理由は、日本書紀に書かれた羽曳野の白鳥伝説まで遡ります。



 ご存じのとおり羽曳野市にはたくさんの古墳があり、令和元年には、堺市、藤井寺市、羽曳野市にまたがる「百舌鳥・古市古墳群」は世界遺産にも認定されています。



 LICはびきののすぐ近くにも、その内のひとつ、白鳥陵古墳があります。白鳥陵は日本書紀に登場する伝説の戦士、ヤマトタケルのお墓です。ヤマトタケルは数多のピンチをくぐり抜けた事から「難局打開の神」とも言われます。父である景行天皇の命令を受け、西に東に遠征し勝利をおさめましたが、大和への帰途、伊勢の地で力つき没しました。故郷恋しさに白鳥に姿を変えたヤマトタケルは伊勢の能褒野を飛び立ち、奈良の御所で一息ついた後に、最後はここ羽曳野の地から天に向かって飛び立ったとされています。白鳥が埴生野の丘から羽を曳くように飛びたったという白鳥伝説が、羽曳野という地名の由来にもなっています。LICはびきのの建物も、正面から見ると鳥が羽ばたいているようにも見えます。

 ヤマトタケルを主祭神として祀っている白鳥神社のホームページにもこの白鳥伝説について詳しく書かれています。一部を引用します。

  

  「生まれ変わり、そして新たな場所へと飛び立つ(変容 ~ 飛翔)」。「死と再生」。これは世界中の様々な神話・通過儀礼において核となっているテーマの一つです。人生において私たち誰もが経験することですが、人は皆、象徴的な死を体験することで初めて新たな段階(高み)へと進んで行くことが出来ます。

  

 あまりにも自然にいつもそこにあるゆえに意識にも上がらないような、この場特有の地形、地理の上でこそ立ちあがる空気感が、どれだけ長い歴史の積み重ねによって醸成された稀有なものであるのかが、白鳥神社のホームページにとてもわかりやすくまとめられています。そこに添えられているジョーゼフ・キャンベルという神話学者のことばをここでも紹介させてもらいます。

  

  

  神話は決して昔話などでありません。人類の深層意識を物語というかたちに置き換えたものが神話であり、そこには現代を生きる我々に必要な多くの智慧があります。つまり神話は世界の共通言語であり、人類が共有する膨大なデータベースなのです。

 「あなた自身の物語を見つけなさい」

 神話学者 ジョーゼフ・キャンベル

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